その日はあまり人と話さなかった。
話せなかったと言えるかも知れない。荷物と自分の身体でいっぱいになったテントの中で、Kindleを開いた。
読んだきっかけ
時間があったから。
というのも、テントを背負って450km歩くと言う旅の最中だったんだ。
テント指定地なんかも無く、ぽつんと1人で何日も過ごした。町に下りて、またはすれ違いざまにおしゃべりすることはあったけど、基本的にはひとりぼっちだ。
そんな時、Kindleの中に読まれず残っていたこの本を開いた。
心に残ったところ
じゃがいもを食べる。
それしかないからそうしているが、目的がはっきりとしている行動を美しいと思った。
何のために?なんて考えは、贅沢なのかも知れない。
読んでいるあいだ
テントの中で一人、本を読む。
火星のプラットフォームで一人、生き延びる主人公。
極限度合いでは比べようもない。
けれど、次に誰かと会うために今日を生きる、その一点だけは、不思議と近く感じる。
読み終えて
酸素があり、柔らかな日光がある。
それだけで、ここはとても幸福な場所なのだと、この本は静かに教えてくれた。
今日を閉じる一文
本を閉じ、耳を澄ませた。
風の音すら聞こえない。
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